306 回折条件
f-denshi.com  更新日 14/11/27   2.[1]を訂正しました。 

X線,中性子線,電子線の回折現象を利用して,結晶格子を求めるための数学的基礎です。また,いわゆるバンド理論と呼ばれる電子構造を記述するための数学的基礎にもつながります。

1.回折条件

[1] すべての格子点が単位格子ベクトル[#]abc を用いて,

T = n1a+n2b+n3c

と表される結晶にX 線を入射させて,その散乱波を遠方で観測することを考えます。原子からの散乱波は球面波として表せますが,その強度は干渉のため散乱方向によって異なってきます。

[2] 右図のように原点をある格子点 O に取り,O から別の格子点 O’を指し示すベクトルをT ,X 線の入射波(平面波 eikr として)の波数ベクトルをk,散乱波の波数ベクトルをk’としましょう[#]。ここで,X線の散乱が結晶とエネルギーの交換を伴わない弾性散乱であるならば,それらの大きさについて,

k  =|k| = |k’| = k’(= 2π/λ)  ・・・ (1)

が成り立っています。 この2つ原子からの散乱波が遠方で強めあうためには散乱方向でX線の位相がそろっていることが必要です。 その条件は O とO' で散乱された X 線の位相差,

k{PO'+O'Q}
     = k{T ・(k/k)−T ・(k’/k’ )} = T ・(kk’)
     = −TK   ( ただし, K =k’−k [散乱ベクトル] とする。)

が 2π の整数倍であることです。すなわち,

TK = 2mπ   ( m : 整数, K = k’−k  )

であることが必要です。

[3] そこで,ベクトル K  の集合のうちでこの条件を満たすベクトル をG と書く, すなわち,

(1)  G TG = 2mπ を満たすベクトル全体の集合,ただし,m : 整数
(2) G = k’−k   

ことにすれば,回折が起こるとき,   ( exp (2mπi ) = 1 なので,)

exp ( i GT ) = 1  

が満足されています。これを, ブラッグの回折条件 といいます。 また,

|G |2 = |k’−k |2 = k2−2kk ’+k2
                    = 2k2−2k ・(Gk
                    = − 2kG

なので,上の (2) の部分は,

(2)’  |G |2 + 2kG = 0  

と書くこともできます。  別の形  ⇒  [#]

[4] さらに見通しの良い計算をするために,G については,逆格子ベクトル[#]ABC }を基底にとって,

G =χ1A+χ2B+χ3C  

と書き表し,T  については,単位格子ベクトルをそのまま基底に用いると,ブラッグの回折条件は,

G ・T  = (χ1A+χ2B+χ3C )・( n1a+n2b+n3c
         = χ1n1Aa + χ2n2Bb + χ3n3Cc
          = 2π(χ1n1+χ2n2+χ3n3

というように計算できます。ここで,Aa  = Bb  = Cc  = 2π を用いました。この結果から, 

「χ1,χ2,χ3 が整数であるならば,
                           ⇒ 必ず,G ・T  は2πの整数倍」

ということができます。 そこで,逆格子点を次のように,

    逆格子点 : G =χ1A+χ2B+χ3C  

       ただし, χ1,χ2,χ3 ∈ 整数

と定義すれば,

「 回折条件(1)を満たすベクトルG は,逆格子点で与えられる。 」

ということができます。この点の集合は一般的に3次元空間を埋め尽くす平行6面体の頂点の集合となります。

2.ブリルアン・ゾーン

[1] ここで,先ほど求めたkG とが満足すべき回折条件(2)’を,  ↓間違いを修正しました。donking様 m(__)m (2014/11/28)

1 G 2  = k 1 G  1 G|=|k|cosθ,    θ:kG のなす角
2 2 2

と書き直してみると, k の先端は,

「逆格子点を結ぶベクトルG の中点((1/2)G )を通り,G に垂直な ”平面の集合” 」

であることがわかります。

[2] このような ”垂直二等分面” を逆格子空間にすべて描くことで,回折条件を満足するk を一目でわかるように図示できます。つまり,この図は,空間に固定された結晶に照射されたX線がどのような条件を満足すれば良いかを示すのにたいへん都合が良い図なのです。

2次元格子の例で考えると,右図の逆格子点 O と逆格子点 A を結ぶベクトルGA ( 線分OA ) の垂直二等分線を考えると,O とこの垂直2等分線上の任意の点を結ぶベクトル kA は,回折を起こす X 線の波数ベクトルを与えています。

[3] 逆格子空間の原点を囲むこのような平面の組に囲まれた,もっとも体積の小さな部分を,第1ブリルアン・ゾーンと言います。

ブリルアン・ゾーン [#]
単純立方格子 ⇒ [#]
面心立方格子 ⇒ [#]
体心立方格子 ⇒ [#]
六方格子    ⇒ [#]

3.エバルトの作図

[1] 次にブラッグの回折条件との関係を見てみましょう。

先ほどの2.で行ったことは,G の座標系を固定(=結晶を固定)し,k をいろいろと変化させた場合の回折条件を図示したことになっていました。

ここでは,それとは逆に,k を固定して G を動かす場合を考察します。 入射波k,反射波の波長が等しいとき,k’の先端は半径|k’|=|k|の球面 (図では円で表しています。(2次元格子を考えて)

となります。また,回折が起こるとき,k’=kG  (2) なので,

k’|=|kG

このような条件を満たすk’は次のように求まります。

(1)k の始点 O を中心に半径|k|の円を描く,
(2)k の終点 A逆格子点の一つが一致するように逆格子空間を重ねて描く。
(3)逆格子空間だけを点 A を中心にいろいろと回転させて,逆格子点のどれか ( 例えば図の,B ) を円周上にあわせる。

すると,O と B を結ぶベクトルは回折条件を満たす反射波 k’ の一つをあたえる。



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補足
  1次元結晶 (T = na ) の場合,回折条件は,kG  が反平行(180°の反射)なので,ブラッグの回折条件は,

|G |2− 2k |G|=0   [ ブラッグの回折条件 ]

および,TG = 2mπ は,

a |G|= −2mπ (m:整数)

この2式より,

k  = |G| / 2  = m π
a