Appendix B1 真空中と誘電体中での電磁波
f-denshi.com  [目次へ] 更新日: 04/10/14

.真空中を伝わる電磁波の波動方程式

13章で示したように真空中でのマックスウェル方程式 [#]

(1) ∇E = 0       ;  (2)  ∇× E  B  = 0
∂t
(3) ∇H = 0      ;  (4)  ∇×H − D  = 0
∂t

から次の波動方程式が導かれます。

2Er,t) = c022Er,t)    ・・・・・  (1)
∂t2
2Hr,t) = c022Hr,t)   ・・・・・  (2)
∂t2
 c0
1 はこの波動の伝播速度=真空中の光速度です。
ε0μ0

この方程式の平面波解の一つは,

 Er,t )=E 0 exp [ i ( kr − ωt ) ]  または,Er,t ) =sin [ kr − ωt +φ ]  

 Hr,t )=H 0 exp [ i ( kr − ωt ) ] または,Hr,t ) =sin [kr − ωt +φ ] 

工学では虚数に負号を付けて,Er,t )=E 0 exp [− i ( kr − ωt ) ] のように定義することもあります。 ⇒[#]

これらパラメーターの意味は一般的波動[#]と同じで,パラメーター間には,

k |   = 2π/λ,
k | c0= 2πc0/λ=2πν = ω 
   ω2   = c02(kx2+ky2+kz2) = c02k2

なる関係が成り立ちます。また,この解をマックウェルの方程式(1)〜(4)に代入すると,

kE = 0,
k ×E =μ0ωH =ωB
kH =0
k ×H =−ε0ωE =−ωD

なる関係のあることも確かめられます [#]。つまり,波の進行方向 k と変位:E H は互いに直交しており,下のような方向関係をもった横波となります。[#]

2.空気中(ε=εrε0,μ=μ0 )を伝わる電磁波

[1] 空気中では誘電率 ε=εrε0 なる誘電体中を伝わる電磁波として取り扱うことができます。これは真空中の電磁場の満たす波動方程式[#]において,係数を ε0 → εrε0 と記号を置き換えること,すなわち,

c0
1     
1  = 
c0  = c0
εr
n
ε0εrμ0
ε0μ0

とすることにすぎないので,空気中を伝播する電磁波の方程式は,

2Er,t)  = c02  ∇2Er,t)    ・・・・・  (3)
dt2 n2
2Hr,t)  = c02  ∇2Hr,t)   ・・・・・  (4)
dt2 n2

となります。ただし,ここで 屈折率 と呼ばれる,

n = εr

を定義して用いました。

[2] ここで,真空中の解を参考にして,(3)の解を

Er,t )=E 0 exp [ i ( kr − ωt ) ]     ( ← 真空中の k から k と換えています。)

とおいて(3)に代入してみると,

Er,t )ω2=−Er,t )(c02/n 2)(kx2ky2kz2

すなわち,

ω2 = c02kx2ky2kz2)/n2= c02k2/n2  

                     ⇔    ω2 n2= c02k2 
           ⇔    k2 = n2ε0μ0ω2

ただし,k =|k|,k = (kxkykz
↑ 真空中では ω2 = c02(kx2+ky2+kz2) = c02k2  でした。

を満たさねばならず,これから, ( 波の性質: 2πν= ω= 2πν=2πv/λより [#]

kc0 = nω = 2πnν = 2πnc0
   ↓     
 k = 2πn/λ

なる関係も導かれます。

つまり,真空中の波数 k を,k → k/nと置き換えることで,空気中(誘電体)における各パラメータとその関係式が得られます。 

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補足

平面波: EE0 ei (kr −ωt )

(E0x exp φ,E0y expφ,E0zexpφ),  ただし,φ≡i [ xkx+yky+zkz−ωt ]

に表の左演算子が作用するとき,右の演算子で代用できる。

演算子 掛け算
(1) 
∂t
i ω
(2)  i k
(3) ×

i k ×

(1)は簡単なので,(2) を示すと,( φ ≡i [xkx+yky+zkz−ωt ] として )

 ∇E
∂E0xexpi [xkx+yky+zkz−ωt ] ∂E0yexpi [xkx+yky+zkz−ωt ]  + ∂E0zexp i [xkx+yky+zkz−ωt ]
∂x ∂y ∂z 
=  i kxE0xexp φ+i kyE0yexp φ+i kzE0zexp φ
i kE

(3)は

∇×E 
∂E0zexp i [xkx+yky+zkz−ωt] ∂E0yexpi [xkx+yky+zkz−ωt ]
∂y ∂z
∂E0xexpi [xkx+yky+zkz−ωt ] ∂E0zexpi [xkx+yky+zkz−ωt ]
∂z ∂x
∂E0yexpi [xkx+yky+zkz−ωt ] ∂E0xexpi [xkx+yky+zkz−ωt ]
∂x ∂y
=(i kyE0zexpφ−i kzE0yexpφ,i kzE0xexpφ−i kxE0zexpφ,i kxE0yexpφ−i kyE0xexpφ)
i k ×E = (i k ×E 0) expφ

すると,本文中の kE = 0 なる関係は,

0 = ∇E =i kE  = 0

と計算ができて,波数ベクトルと電場が直交していることが示される。他の式の導出は演習問題。

注意: 

電磁波を,空間部分と時間部分の符号を変えて,EE0 ei ( ωt-kr ) と定義している教科書(電気回路など工学系の教科書)もありますが,材料科学を主題とする「ときわ台学」では,量子力学で多く使われるここで示したような符号を採用しています。この違いは次章で複素屈折率取り扱うときに虚数部の符号の違いとなって残るのでいろいろな文献を並行して読むときには注意が必要です。悩まないように。

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