7 ローレンツ変換
f-denshi.com  [目次へ] 最終更新日:03/05/17

 ローレンツ変換とは電磁気学の法則(マクスウェルの方程式)をすべての慣性系で不変に保つような座標変換はどうあるべきかという考察に基づいて,ローレンツが初めて提案しました。後にアインシュタインはこれを,「光速度不変の原理」 と呼ばれる時間・空間のもつ基本的な性質であることを提唱し,力学にも適用して現在,特殊相対性理論として知られる体系を作り上げました。本ページではローレンツ変換を光速度不変の原理から導き,その解釈を簡潔に述べます。特殊相対性理論は,それだけの説明で一冊の本が書ける内容を含んでいます。しかし,本講義は相対性理論の解説を目的とはしておらず,ローレンツ変換はあくまで,電磁気学体系の中での第2番目の”公理”として位置づけています。したがって,結果[#]だけをそのまま受け入れて,先へ読み進んでも構いません。

1.ローレンツ変換の導出

[1] 互いに等速直線運動する2つの座標系を考えます。ひとつは静止座標系と呼ぶ座標系 Σ(x,y,z) です。もうひとつは静止座標系から見てz 軸の正方向へ速度v で運動している座標系 Σ '(x',y',z') で運動座標系と呼ぶことにします。
 時刻 t=0 で,2つの座標系ΣΣ 'の座標軸が完全に一致しているとすると,任意の時刻 t=t  でのΣ ' の原点はΣの座標で,(0,0,vt) に見出すことができます。

[2] さて,光が時刻 t = 0  で全方向に向かって放たれて広がってゆく様子をこの2つの座標系で観測したとします。このとき,光はすべての座標系(観測者)において速度 c で進むこととします。 (=光速度不変の原理 ← 実験事実!で電磁気学の2つ目の原理です。[#]) すると,t 秒後の光の到達面はどちらの座標系でも半径 ct の球面上にあるはずです。ただし,時刻 t は2つの座標系で同じとは限りらないとします。そこで,運動座標系の時刻には t'という記号を使いましょう。すると,その球面の方程式は,

x2 +y2 +z2 =(ct)2      ・・・・・・・・・・(1)
x'2+y'2+z'2=(ct')2    ・・・・・・・・・・(2)

となります。これを満たすように静止座標系Σ(t,x,y,z) と運動座標系Σ '(t,x',y',z') との”関係” = ”座標変換の式” を求めることがここでの問題です。

[3] 2つの座標系は対等でなければいけないことと,x,y方向の空間対称性を考慮すれば,座標変換は1次変換:

t' = At+Bz
x' = x
y' = y
z' = δt+γz
                      ・・・・(3)
A,B,δ,γ は適当な定数

とおくことは妥当でしょう。
(要するに,縦ベクトル xt(t,x,y,z),yt(t,x',y',z')を考えて,これらが座標変換の行列P で,yPxxP-1y と関係付けられるということ。 ただし,P-1P の逆行列で,P の成分に含まれる,v を -v と置き換えて得られるようでなければいけません。)

  さらに座標系Σ 'の空間原点(0,0,0)の運動を観測した場合,Σ 'では時間によらず,(x',y',z') = (0,0,0)ですが,Σでは(x,y,z) = (0,0,vt) となるので,((3)の第4番目の式 0 = δt+γzより) z = -δt/γ = vt でなければなりません。逆にΣ 'から見たΣの位置座標の原点を観測した場合,(x,y,z) = (0,0,0) に対して,(x',y',z') = (0,0,-vt),すなわち,z' = δt = δt'/A = -vt' ,(←(3)の第4番目と1番目 t'= At+B ・ 0 を使ってます。)つまり,

δ = −γv
A  = γ

が成り立つ必要があります。したがって,(3)の1行目,4行目の式は,

t'= γt+Bz
z'= γ(−vt+z)
                     ・・・・(4)

と書けます。

[4] 次に,(4)を(2)に代入して,整理すると,

x2+y2+(γ2−c2B2)z2  =  (c2−v22t2 + 2(vγ+c2B)γzt   ・・・・・・ (2)’

これを(1)に等しいとおいて解けば,

γ2−c2B2   = 1
(c2−v22 = c2
vγ+c2B     = 0

これを解くと,

γ= 1 ,  B=− v
 1−(v/c)2
c2  1−(v/c)2

となります。記号を改めて,

ローレンツ変換
ct'=  ct−βz   = γ (ct − βz)
 1−β2
x' = x 
y' = y
z' =  z−βct   = γ (z − βct)
 1−β2

ここで, 

γ = 1  > 1,    β = v
 1−β2
c

.ローレンツ収縮

[1] 長さ

  運動座標系Σ ' で静止している半径 1 の球

x'2+y'2+z'2 = 1     [ 球面の方程式 ]

は静止座標系 Σ から見ると,座標変換: x' =x,y' =y,z'=γ(z−vt) より

x2+y2 (z−vt)2   = 1 [ 楕円面の方程式 ]
(1/γ)2
(↑時刻とともに中心は移動します。)

なので,  

運動している物体は静止系から見ると,運動方向に γ 分の 1 に収縮して見える。

これをローレンツ収縮といいます。もちろん,電荷を帯びている物体についてもこの収縮は観察されます。一方,電荷保存の法則から電荷はどちらの座標系でも等量だけ存在するので,結局これは,
「座標系によって電荷密度が違って見える」 ことを意味するのです!

[2] 時間

  運動座標系において時刻 0 に発した光が y' 軸正方向にまっすぐ進み, t' 秒後に,

y' = h = ct'

に到達したとします。一方,これを静止座標系で観察すると,光はy 軸方向へ

y = h = ct        

進むだけでなく,z 軸方向へも vt だけ進んでいるはずです。すると,三平方の定理から,

(ct)2 = (ct')2 + (vt)2

が成立しなければなりません。書き直すと,

t’
 1−(v/c)2
1 < 1
t γ

つまり,

運動座標系の時計は静止座標系から見ると γ 分の 1 のスピードでゆっくり進む。


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