Appendix 3 三角形のストークスの定理
f-denshi.com  最終更新日:03/05/14

  3次元空間のベクトル場に ”渦” があるかないかを判定するための道具である循環と呼ばれる量を定義し,ベクトル解析における重要な定理の一つである ”ストークスの定理”[#] の原型を見い出すこととします。まず,用語の説明からです。

[1] ユークリッド空間の位置ベクトルをr ,ベクトル場を A (r) =(A1(r),A2(r),A3(r)) とし,

A (r)=ArB 0          ; B0 は定数ベクトル

と表せる場合[#]を考えましょう。これは話を特殊なベクトル場に制限しているようですが,Appendix 2 でも述べたように,「ベクトル場が1階連続微分可能ある」という ”応用上よくあるフツーのベクトル場” の微小領域でいつでも適用可能です。ここで,行列 Aは3変数のC1写像におけるヤコビ行列

A
∂A1
∂x
∂A1
∂y
∂A1
∂z
  ≡ A1x A1y A1z
A2x A2y A2z
A3x A3y A3z
; および,r x
y
z
∂A2
∂x
∂A2
∂y
∂A2
∂z
∂A3
∂x
∂A3
∂y
∂A3
∂z

で与えられることになります[#]

[2] このとき,ベクトル場の閉曲線Cに沿った循環(CircA  )とは,「閉曲線に沿ったベクトル場の線積分[#] 」のことで,

閉曲線 C の回りの循環とは,(一般的な定義)
CircA = A ・t ds = A ・dr

と定義します。

  ここでは閉曲線 C として3次元空間内の閉じた折れ線を考えます。この折れ線を連なる非常に小さなベクトル:dr kの集合と考えて(右図),この折れ線周りのベクトル場 A の循環 CircA を,

多角形の循環の定義(1)
CircA A (r k)・dr k   (閉じた多角形の周囲沿って)

       (  もちろん,   dr k0  です。)

と定義しましょう。ただし,r kは折れ線の線分,|dr k|の中心を示す位置ベクトルです。

[3] 積分路Cはどんな多角形でもかまわないのですが,ここでは小さな三角形に沿って循環を計算してみましょう。なぜなら,多角形はいくらでも小さな三角形に分割してその寄せ集めとみることができ,その線積分の総和は右上図のように内部はキャンセルし合って,周囲の線積分だけ残ります。したがって小さな三角形について循環を調べれば十分なのです。

[4] さて,小さな三角形の各辺を3次元ベクトル,
         dr 1,dr 2,dr 3
からなる3つのベクトルで表す(右図)と,各辺の中点を指す位置ベクトルr kは,
r1r3−dr 2/2
r2r3+dr 1/2
dr1+dr2+dr 30

という関係があります。これらと,最初に述べた近似,A (r)=ArB 0
および,定ベクトルB 0 の循環は明らかに 0 であることに注意すると,
この微小三角形の周りの循環は,

ΔCircA =dr 1A(r1)+dr 2A(r2)+dr 3A(r3)
      =dr 1・(Ar1)+dr 2・(Ar2)+dr 3・(Ar3)+( dr1+dr2+dr 3)・B 0
      =dr 1・(A(r3−dr 2/2))+dr 2・(A(r3+dr 1/2))−(dr 1+dr 2)・(Ar3) + 0
      =−dr 1・(Adr 2)/2 +dr 2・(Adr 1)/2
      =−dr 2・(tAdr 1)/2+dr 2・(Adr 1)/2       [#]より
      =(1/2)dr 2(A−tA)dr 1
      =(1/2)dr 2(Ωdr 1)  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・  [*]

と計算されます。ただし,ΩAtA は3行3列の行列で,

ΩAtA 0
∂A1
∂y
∂A2
∂x
∂A1
∂z
∂A3
∂x
∂A2
∂x
∂A1
∂y
0
∂A2
∂z
∂A3
∂y
∂A3
∂x
∂A1
∂z
∂A3
∂y
∂A2
∂z
0
ここで, ω1 ∂A3 ∂A2 ,ω2 ∂A1 ∂A3 ,ω3 ∂A2 ∂A1  とおくと,
∂y ∂z ∂z ∂x ∂x ∂y
Ω 0 −ω3 ω2
ω3 0 −ω1
−ω2 ω1 0

と書けます。   (↓ヤコビアンと回転(外積)との ”因果” はこんなところにあるんです。)

[5] ここで,ω1,ω2,ω3 をこの順に定義したことにはちゃんとワケがあって,これらを成分とするベクトル,

 rotA ≡ ω ω1
∂A3 ∂A2
∂y ∂z
ω2
∂A1 ∂A3
∂z ∂x
ω3
∂A2 ∂A1
∂x ∂y

を定義すると,[*] の (Ωdr 1) が, ⇒ ω ×dr 1 (証明はすぐあとで[#]) と書けるのです。もちろんこれはベクトル A回転の定義です。

[6] これを用いると,[*] のつづきは,

ΔCircA=(1/2)dr 2・(Ωdr 1)
           =(1/2)dr 2・(ω×dr 1) ↓ スカラー三重積を使って [#]
           =ω・(dr 1×dr 2)/2 
           =ω ・dS 
           =rotA ・dS 

と書くことができます。ここで,dSは大きさが微小三角形の面積に等しく,方向がその面に垂直な正方向を向いたベクトルで,面積素ベクトルと呼ばれるものです。結局,ベクトル場 A の循環はその回転と面積ベクトルの積として次のように書けます。

微小三角形の循環: ΔCircA
A (rj)・dr jrotA ・dS; ただし,dS dr 1×dr 2
2

 任意の多角形の循環は微小三角形の和で表すことができて,次のような定理として述べることができます。

ストークスの定理 [多角形版]
[A (r k)・dr k]= rotA ・dSj  
k は多角形の周囲に属する辺の数だけ, j は分割された微小三角形の数すべてについて和をとります。

左辺の和を多角形の周辺部分についてだけとればよい理由ははじめにも述べたように多角形の内部では,ベクトルがすべて打ち消しあって消えてしまうからです。

 ちなみに,一般の曲線の場合のストークスの定理は,

A ・dr rotA ・dS 

となりますが,これは多角形のストークスの定理について,n,m → ∞ の極限を積分記号で表したものです。

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Ωω の性質>

(1) (Ωr)=ω×r (の証明)

Ωr = 0 −ω3 ω2 x 2−yω3 ω1 × x ω×r  
ω3 0 −ω1 y 3−zω1 ω2 y
−ω2 ω1 0 z 1−xω2 ω3 z
ちなみに,tΩ=−Ωという性質(交代行列)だけから
  (Ωω)・r0  ⇔ ω・(tΩr )=0  ⇔ ω・(−Ωr )=0  ⇒ (Ωr)・ω0
および,
  (Ωr)・rr ・(tΩr) =−r ・(Ωr)=−(Ωr)・r         ⇒ 2(Ωr)・r0

つまり,(Ωr)はωr の両方に垂直なことがわかります。ω,ΩΩr の物理的な意味は力学で剛体の回転運動
を記述する際に,それぞれ角速度ベクトル,動座標系の基底ベクトルの変移速度,位置の回転速度に関係付けられ
ていることがわかります。AppendixB2 慣性モーメント・オイラーの方程式を参考にしてください。

(2) Ωω0 

Ωω 0−ω2ω3+ω2ω3 0
ω3ω1+0−ω3ω1
−ω1ω2+ω1ω2+0

(3) Ωr はω の各軸の周りの3次元の90°回転

Ω 0 −ω3 ω2 x
ω3 0 −ω1 y
−ω2 ω1 0 z

一部分を抜き出すと,

Rx 0 1 y
ω1 0 z
: Ry 0 2 z
ω2 0 x
: Rz 0 3 x
ω3 0 y

となり,

Rk=ωk cos 90°  - sin 90° y
cos 90° sin 90° z

は k 軸周りに 90°回転して,ωk倍する写像であることがわかります。


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