Appendix 1  対角線論法
f-denshi.com  最終更新日: 04/10/10

1.対角線論法

  実数の集合の濃度が自然数の集合の濃度より大きいことを証明するために用いられた論法の一つです。
  開区間(0,1)のすべての実数(無限小数)を自然数に対応させながら,一列に並べることができた,として矛盾を導きます。
       ( 開区間(0,1)が実数全体に対応することは本文中で見たとおり[#] )

 実数が次のように番号を付けて並べられたと仮定します。

r1 = 0.x11 x12 x13  ・・・・・
r2 = 0.x21 x22 x23  ・・・・・
r3 = 0.x31 x32 x33  ・・・・・
        :
        :

  ここで,xjk は,j 番目の実数の少数第 k 位の数で,0,または1桁の自然数(1〜9)のどれかを表しています。
  このとき,

y1 ≠ x11
y2 ≠ x22
y3 ≠ x33
      :
      :

となるように 0,または1桁の自然数,y1, y2, y3,・・・・ を選び出し,それを順に並べた次のような無限小数(=実数),

y = 0.y1 y2 y3 ・・・・ 

を考えます。すると,この y は,

実数 r1 と少数点第1位が異なり,
実数 r2 と少数点第2位が異なり,
実数 rn と少数点第n位が異なり,
・・・・・・・・・・・・・・

ということになります。すなわち,y はすでに並べ尽くされているはずのすべての実数 r1,r2,・・・・・ と異なることになり,矛盾を生じます。  はじめに実数を自然数に対応させて並べたことがまずかったのです。したがって,実数の集合は可算濃度ではないのです。

2.有理数の集合が可算であること

  第一象限の格子点の集合(m,n)と正の有理数 n/m とを1対1対応させる方法を示せば十分でしょう。図を見ていただくだけでわかると思いますが,一応,説明を付けておくと,格子点を正の有理数に見立てて,それを右図の自然数のならびに対応させてゆくことを考えます。このときの自然数の並べ方は,左の(n/m),すなわち n/m に対応する有理数がそれまでにでてきた有理数に等しい場合,例えば,(2,2)〜2/2=1 はすでに(1,1)〜1/1=1のときに自然数2に対応させた後なので,これは跳ばして(×)いきます。このようにすれば,正の有理数と自然数が1対1に対応していることがわかります。

(1,4) (2,4) (3,4) ・・
(1,3) (2,3) (3,3) (4,3) ・・
(1,2) (2,2) (3,2) (4,2) ・・ (5,2)
(1,1) (2,1) (3,1) (4,1) ・・ (5,1)
|
(1,0) (2,0) (3,0) (4,0) ・・ (5,0)
10 × 16 ・・
× 15 ・・
× × ・・ 14
・・ 11
格子点 自然数への対応

3.ペアノ曲線

 上で見た格子点と有理数の対応状況は,2次元平面の無限集合(=格子点)と1次元無限集合(=有理数)とが 1対1 対応することが可能だということを示しています。さらに,ペアノは,この関係は連続的な極限へ移行させることもできることを示しました。つまり,2次元閉領域と,1次元の直線が対応するという奇妙な結論が導かれます。例えば,連続曲線と1辺の長さが1の正方形上の点を1対1に対応させる方法の一つは下図のような極限操作を行なうことです。

⇒ ⇒
少数点第1位までの数 少数点第2位までの数 少数点第3位までの数 少数点第4位までの数
ヒルベルトが示した連続曲線(1次元)上の点と正方形(2次元)上の点を対応させる方法
4進法で表した区間[0,1]にあるすべての実数を介して対応しています。  高木貞治著「解析概論」(岩波書店)の付録IIも参照のこと

これを写像の言葉を使って表すと,

上への写像 Ψ:  [0,1]  ⇒ [0,1]×[0,1]

が存在するということになります。

これは,面積を持たない1次元の曲線上の点の数と,面積1を持つ正方形上の点の個数が等しいことを示しています。

この事実は,集合の濃度はその集合の次元とは直接,関係がないことを言っています。普通に考えれば,2次元 R×R 上の元の数の方が実数 R より多いに違いないと考えたくなりますが,ペアノ曲線はこの直感を完全に否定します。次に示す濃度の計算例もこの辺の事情をよく表しています。




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