12 定積分 (リーマン積分)
f-denshi.com  最終更新日:06/05/19

 12章以降は積分がテーマです。ただし,不定積分についてはThe講義:「微分方程式・特殊関数」に分類されています。ここでは定積分について学びます。

1.定積分[リーマン積分]の定義 (急ぐ方はとばして下さい)

  面積という概念も元をたどっていけば,証明なしに受け入れるべき公理にたどり着きます。平面図形の場合は,たて,よこの辺の長さが a,b である長方形の面積を a×b と定義するところが出発点となります。多角形の面積についてはこの公理とユークリッド幾何学の時代から使われるいくつかの公理や有限加法性[#]を用いて演繹的に求める(計算する)ことができます。しかし,直線でない曲線に囲まれた図形の面積については新たな面積の定義を導入して初めて数学的な考察の対象となるのです。もちろん,この定義は長方形の面積が a×b であるという古くからある素朴な定義と矛盾するものでは困ります。この新しい面積の定義には ''無限'' という概念を取り込む必要があります。

[1] 区間 [a,b] で定義された有界な関数 f(x) と x 軸に囲まれた図形(右図の黄色の部分)の面積S を求める(←正確には妥当な面積の定義を定めるというべきもの)手順を考えます。
いま,この区間内で,f(x) ≧ 0 として話を進めます。

まず,区間,[a,b] をn個の区間,

[a=x0,x1),[x1,x2),・・・,[xk-1,xk),・・・,[xn-1,b=xn]

に分割します。この分割点を通る垂直線によって,求めるべき面積もn個の短冊に分割されます。ただし,これらの短冊の上端はy = f(x) に沿うため長方形をしていません。また,各区間の幅は等間隔である必要はありません。

[2] 左からk 番目の短冊の面積 sk の評価

 ここで右に示すような k 番目の短冊(薄い黄色の部分)に注目します。 この短冊の面積 sk を長方形の短冊で近似したいわけですが,そのような長方形の高さは右図の mk と Mkとの間にあることがわかります。ここで,mk と Mk は区間 [xk-1,xk) での f(x) の下限と上限です。これを式(記号)で書くと,

下限: mk inf f(x)
xk-1≦x≦xk
上限: Mk sup f(x)
xk-1≦x≦xk

であり,k 番目の短冊の面積 sk について,

mk(xk−xk-1)  ≦ sk Mk((xk−xk-1)

が成り立ちます。

[3] 図形の全面積 S の評価

次に 1 から n 番目まで短冊すべてについてその面積を足し合わせると,

Sm mk(xk−xk-1) 
 ≦ S ≦
Mk(xk−xk-1)  = SM

の関係がわかります。ここで,等号は区間 [a,b] で,f(x)=定数 のときにしか成り立ちません。

[4] 面積の確定

そして,あらゆる分割の仕方 ( n→∞ も含める) を考えて,その中でSmの上限[#] を,ジョルダンの内測度(または内面積)といい,

 |S|* = sup Sm = sup mk(xk−xk-1)

と書きます。一方,SMの下限をジョルダンの外測度(外面積)といい,

 |S|* = inf SM = inf Mk(xk−xk-1)

と書きます。ここで,

|S|*=|S|*

が成り立つとき,面積が確定しているといいます。一方,この2つが一致しないとき,面積は確定しないといいます。

[5] ここまで, f(x)≧0 としてきましたが,この条件をはずして考えて, |S|*=|S|*が成り立つとき,f(x)は[a,b]で定積分可能といいます。すなわち

[定積分の定義]
sup mk(xk−xk-1)=inf  Mk(xk−xk-1)

が成り立つとき,f(x)は定積分可能といい,

f(x)dx

と書きます。  

(注意) 積分可能ならば,n→∞の極限で,xk−xk-1 の最大値が 0 になるようなどんな分割の仕方をとっても,
f(ξk)(xk−xk-1); xk≦ξk<xk-1
は必ず(一つの)積分値に収束することがわかっています。 [タルブーの定理]

[6] さて,定積分の定義がわかったら,次にどんな関数ならば定積分積分可能かということが気になりますが,その一つの答えを与えてくれるのが次の定理です。

定理

   閉区間 [a,b] で連続な関数 f(x) は定積分可能である。

(証明略)

 この定理の逆は成り立ちません。
不連続な関数でも定積分可能な関数はいくらでもあります。微分可能性とは対照的に定積分はズタズタに引きちぎられた不連続な関数 f(x)においてさえたいてい積分可能です。例えば,右に示した関数は積分可能です。
  とはいってもズタズタに引き裂かれている箇所はどれだけたくさんあってもいいというわけにはいかないのです。ここでは詳しくは述べませんが[ルベーグ積分参照],不連続点が有限箇所の有界な関数が定積分可能なことは容易にわかります。
 有限個の不連続点で求めるべき図形を縦割りにして有限個の図形片に分けて考えれば,その一つ一つ図形片については上の連続関数に関する定理が使えるので面積確定です。さらにそれらをすべて合計すれば,全区間の定積分の値となります。
  ↑ただし,解析的な関数で表現できるかどうかは別です。

.微分積分法の基本公式

[1] f(t)を区間 [a,b] で連続定積分可能とします。このとき a≦x≦b なる任意の x について定積分が存在するので,それを x の関数とみなし,

G(x) = f(t)dt

とおき,不定積分といいます。これを x の関数と見なすと,G(x)は x で微分可能で,

G'(x) = f(x)

が成り立ちます。

[2] 証明は,まず,欄外の定積分の公式( II )[#]から

G(x+h)−G(x) = f(t)dt −  f(t)dt =  f(t)dt

ところが,右図を参考にして,

mh ≦  f(t)dt ≦ Mh

ここで,mMはリーマン積分の定義のところでも用いた記号[#] で,区間 [x,x+h] における f(x) の下限と上限を表しています。これら2つ式から,

m G(x+h)−G(x)
 f(t)dt
 ≦ M
h h

ここで,h → 0 とすると,f(x)の連続性から,不等式の両端は,

m→f(x), M→f(x)

となります。また,中央の等号の左式は,h→0においては G(x) の微分 G'(x) の定義そのものズバリです。(証明終)
以上,まとめると,

定理
  f(t) を [a,b] で有界な関数とする。さらに,
(1) f(t)が [a,b] で定積分可能ならば,
         ⇒ G(x) = f(t)dt , (a≦x≦b) は連続関数
(2) f(t)が [a,b] で連続ならば,
         ⇒ G(x) = f(t)dt , (a≦x≦b) は微分可能で,

    G'(x)=f(x)

が成り立つ。

[3] この定理(2)は,G(x)は f(x) の区間 a から x までの定積分であったはずが,実は f(x) の原始関数でもあることを示しています。つまり,任意の f(x) の原始関数 F(x) と積分定数 C を用いて,

G(x)=F(x)+ C   (←両辺微分すれば,G'(x)=F'(x)=f(x)なので,)

と書けます。これは特に x=a ( このとき,積分値は0 )でも成り立つので,

0 = G(a) = F(a)+C  ⇒ C=−F(a)

すなわち,G(x) = F(x)−F(a)と書けます。 最後に,x=b と変数を改めれば,

定理

f(x)の原始関数を F(x) とすると,公式:
f(x)dx = F(b)−F(a)
が成り立つ。

これを微分積分法の基本公式と呼びます。この定理は,''公式''と呼ばれますが,定理と呼ぶべき重要な関係です。

 ふつう,「 定積分を計算する ≒ 原始関数を求める 」と思い込んでいるのはこの公式が成り立つおかげです。これが,「リーマン積分の定義」を忘れてしまっても定積分でぜんぜん困らない理由です。

[ 目次へ ]


定積分の公式

定積分の基本的な性質について列挙します。

( I ) 積分経路の反転

f(x)dx=− f(x)dx

( II ) 積分経路の分割

f(x)dx= f(x)dx+ f(x)dx

( III ) 線形性

{αf(x)+βg(x)}dx=α f(x)dx+β g(x)dx

どれもあたりまえのようですが,特にこの3番目の式( III )を眺めたとき,積分操作が線形写像(〜内積),被積分関数がベクトル[#] に対応することに気がつきます。これは重要なことです。


CopyRight フジエダ電子出版