3 環 Znと有限体 Fp
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 第一部 群論 11,14では整数の剰余類の集合Zn について,加法群と乗法群 ×を別々に導入してそれぞれ考察しましたが,ここでは同時にこれら2種の演算を持ち込み,環,および(有限)体を構成します。

1.環Znと体Fp

[1] 整数の剰余類の集合:

Zn ={[0]n,[1]n,[2]n,・・・,[n-1]n

を考えます。11.[#]で見たようにZnは加法を演算として可換群をなします。この加群では,[0]n が零元となり,[a]n のマイナス元(逆元)は[n-a]n であたえられます。また,剰余類を乗法群とするために乗法×を定義することも可能で交換法則が成り立ちました。 さらに,この2種の演算の定義に基づいて,

[a]n×( [b]n[c]n)=[a]n× [b+c]n
               =[a×(b+c)]n
               =[a×b+a×c]n
               =[a×b]n[a×c]n
               =[a]n×[b]n[a]n×[c]n

と,× についての分配法則が成り立つことがわかります。すなわち,

剰余類,Znは この×の演算のもとで(1をもつ可換)環である

ことがわかります。これを整数の剰余環と呼びます。

[2] 整数の剰余類Znのうち,n の倍数の集合(n)=[0]n={・・・-2n,-n,0,n,2n,・・・}は整数のイデアルとなっています。

 

 さて,14.で見たように,

Zn* Zn −{ [0]n
    = { [1]n,[2]n,・・・,[n-1]n

n が素数 p であるとき,積 × のもとで群をなしました。これは Znで考えると,零元である[0]n 以外のすべての元が積に関しての逆元をもつことを示しています。したがって,2種類の演算× が定義されたもとで次の定理が成り立ちます。

定理 [p 元体]

p を素数とすると,Zp ={ [0]p,[1]p,[2]p,・・・,[p-1]p } は × の演算のもとで体となる

 この体(正確にはこれと同型な体)を整数の剰余体,またはp元体といいます。また,体であることを(2種類の演算を考えていることを)はっきり示すために体の英語,Field の頭文字をとって,Zp の代わりに以後,Fp と書くことにします。←整数の剰余群Zpと区別するためです。

また,これ以後,特に注意を促す必要があるときを除いて,[ ]pを省略して,

Zp Fp = { 0,1,2,・・・,p-1 }

と表記することにしましょう。

2.原始根と指数

[1] Fp = { 0,1,2,・・・,p-1 } から零元を除いた集合を, Fp* ={ 1,2,・・・,p-1 } とします。 Fp* には乗法として元の位数 [#] が p-1 の元 r が少なくとも一つ存在することが証明できます(Apndex 1)。すなわち,Fp*は積に関して巡回群で,r 自身をかけ合わせていけば,

r,r2,・・・,rp-2,rp-1=1

が得られ,これら p-1個の元はすべて異なっています。このような元 r を p を法として原始根といいます。
この r を用いれば,

Fp* = { 1,r,r2,・・・,rp-2

と表すことができます。したがって,r が与えられると, Fp* の任意の元 a は,

a = rk

と書くことができ,各元をそれぞれ異なる k に一意的に対応させることができます。この k を 原始根 r に関する a の指数 といい,

k =ind r( a )   

と書きます。


[2] F5* = {0, 1,2,3,4 }について具体的に見てみると,

r=  0 1 2 3 4
r=0  0 0 0 0 0
1  0 1 2 3 4
2  0 2 4 1 3
3  0 3 1 4 2
4  0 4 3 2 1
n= 1 2 3 4
r=1  1 1 1 1
2  2 4 3 1
3  3 4 2 1
4  4 1 4 1
Z4 0 1 2 3
0 0 0 0 0
1 0 1 2 3
2 0 2 0 2
3 0 3 2 1
F5積表 F5*累乗 rn

上の表から,

Fp*={ 1,2,3,4 }において,23 がp-1=4乗して初めて,1となる原始根であることが分かる。

さらに,原始根が2の場合は,

{ 1,r,r2,r3 }={1,2,4,3}=Fp*

原始根が3の場合は,

{ 1,r,r2,r3 }={1,3,4,2}=Fp*

であることが確かめられます。

ind r( a ) については,

n = 0 1 2 3 4
2n 1 2 4 3 1
3n 1 3 4 2 1
4n 1 4 1 4 1
a  = 1 2 3 4
ind 2(a) = 0 1 3 2
ind 3(a) = 0 3 1 2
ind 4(a) =

となります。

[2] これは普通の対数 log と似た性質( a = rk ⇔ ” log ra = k ”  ) をもっていて,

Fp* の元 a,b に対して

  ind r(ab) = ind r( a )ind r( b )  (mod p-1)  
  ind r(ak) =  [ k ] p-1 × ind r( a )    (mod p-1

が成り立ちます(証明略)。 ←指数の演算+,× が ” mod p-1 ” でおこなわれるのはもちろん, ap-1=1 に起因してます。

[3] また,Fp* の元 a の位数 |a| と原始根 r に関する a の指数 ind r(a) との間には,次の関係があります。  

|a|= (p-1)
(p-1,ind r(a))

F5*の原始根3に対する4の位数は2ですが,

(5-1) =2   
(5-1,ind 3(4)

と計算すれば,4の位数が2であると求まります。

F5*の原始根3に対する2の位数は3ですが,

(5-1) =4   
(5-1,ind 3(2)

と計算すれば,2の位数が4であると求まります。

(証明略)

3.フェルマーの小定理

[1] 体の理論に入り込む前に,これからしばしば用いる定理を一つ紹介しておきましょう。数論と代数との接点がここに見いだせます。この定理はフェルマーの小定理と呼ばれています。

フェルマーの定理:
素数 p で割り切れない整数 a に対して,

   ap-1 は p で割ると余りは 1 である。  ⇔   ap-1≡1 (mod p)

証明  (p=2のときは明らかに成り立つのでp>2とします。)

[2] 有限体Fp を考えます。←もちろんpは素数です! まず,a を p で割り切れない整数としたので,[a]p は [0]p に等しくないことに注意しましょう。

[3] 次に,集合: Fp*Fp−{ [0]p } の (p-1)個の元,

{[1]p,[2]p,・・・,[p-1]p} = Fp*

Fp* の元それぞれに, [a]pFp* を掛けた集合,

[a]p×Fp*≡{[a]p×[1]p,[a]p×[2]p,・・・,[a]p×[p-1]p

を考えます。この集合の(p-1)個の元は互いにすべて異なります。たとえば,もし,

[a]p×[1]p=[a]p×[p-1]p ならば,⇒  [1]p=[p-1]p  

となって矛盾するからです。↑体は簡約ができるのでした。[#] したがって,

Fp* = [a]p×Fp*  ←集合として等しいことを言ってます。

です。

[4] すると,この2つの集合それぞれについて,”すべての元のかけ合わせ(積)”を考えると,それらは等しく,次の等式が成り立ちます:

[1]p×[2]p×・・・×[p-1]p=([a]p×[1]p×[a]p×[2]p)・・・×([a]p×[p-1]p)  

                  =[a]pp-1×( [1]p×[2]p×・・・×[p-1]p )    

両辺を [1]p×[2]p×・・・×[p-1]p で簡約すれば,

[1]p = [a]pp-1  

つまり,mod p のもとでは, [a]pp-1 = [ap-1]p なので [#]

[1]p = [ap-1]p  ⇔  「 ap-1 は p で割ると 1 余る整数」

と言うことがいえるのです。以上よりフェルマーの小定理が証明されました。

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