9 共役類
f-denshi.com  最終更新日: 04/03/05
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前章では,右剰余類,左剰余類を求めてから商群を構成しましたが,ここでは別の角度からこの問題について考えてみましょう。

1.群 G の G 自身への働きと G軌道

[1] 5.で,群 G ={e,g1,g2,・・・,gn }が集合 M (M≠G) に働くことについて述べましたが,ここでは,G 自身への働き,つまり,M = G の場合について考えましょう。この場合の働きとは合成写像を作ることに相当します。その”働き方”は自由に考え出す(定義する)こともできますが,群論において重要なのは両側からの働きと呼ばれるもので, g,h∈G について

G の両側からの働き : g(h)=g・h・g-1  すなわち,  g: h → g・h・g-1   

のように働き方(写像と定義域&値域)を定義します。(写像の合成を意味する記号は省略可ですが,ここではわかりやすいように省略していません。)これがなぜ重要かというと,

「 g と h が可換ならば g(h) は恒等写像になる。」

からです。つまり,元の可換性を調べるにこれが活躍するのです。

[2] 他にも働きには,

G の左からの働き : g(h)=g・h
G の右からの働き : g(h)=h・g   

などが使われます。上の例が「働き」であることを定義 [#] に従って確かめて見ましょう。「左からの働き」については,g1,g2,h,e∈G として,g2(h)=g2・h に注意して,

 (1) g1(g2(h))=g1(g2・h)=g1・{g2・h}={g1・g2}・h=g1・g2(h)
 (2) e(g)=e・g=g

となり,働きの2つの条件[#] を満たしています。「右・・」,「両側・・」についても同じように計算してみせることができます。

5章での働きの定義が抽象的なのはこういう事情があったのです

[3] 「 G の両側からの働き」 が重要なのは可換性に関わっており,これは共役という概念が使われます。(元を線形写像に限定すれば,2つの元が共役とは,ベクトル空間の基底変換によって互いに移り変われる元どおしという意味です。)

群 G の G上への両側から働き,すなわち,G から G への写像:
g(h) = ghg-1 ∈ G  
を考える。このとき,

(1) ある固定した h∈G に対して定まる次のような G の部分集合 C(h):   
C(h)={ g(h)|すべての g∈G }
    ={ ehe,g1hg1-1,g2hg2-1,・・・,gnhgn-1  (e,g1,g2,・・・,gn∈G)
を 「h を含む 共役類」という。 

(2) また,a に対して,ある g∈G が存在して,

    a=ghg-1 ,g∈G

と表せるとき,a は h と 共役 という。

 最後のところ,別の言い方をすると,

「 a が h に共役ならば,集合リスト:{ehe,g1hg1-1,g2hg2-1,・・・,gnhgn-1 } の中に a と等しいものを見い出せる。」

ということです。

 もうひとつ重要なことは,どういうときに C(h)⊂G,( C(h)≠G ) となるかというと,リストの中に重複が起こるときと h と可換な元があるときの2つの場合です。つまり,

(A) g1hg1-1 = g2hg2-1       ( 重複が存在 )
(B) g2hg2-1 = g2g2-1h = h  ( h と可換な元 )

などとなるとき,C(h)の大きさ(位数)はその分小さくなってしまします。

[4] また,

(1)共役は同値関係である[#]
(2)共役類とはh を含む G-軌道 の ”一つ” である[#]

ことに注意して下さい。このことから a と b が共役ならば,これらは同じ共役類に属しているわけです。そして,「 共役類によって,群 G は共通部分のない部分集合に分割 」 されます。

[5] 正四面体回転群の例を調べて見ると,共役類は4つあり,

A={a1,a2,a3,a4
B={b1,b2,b3,b4
H={ hx,hy,hz
E={e}

となります。ここで,各元の回転操作を思い出していただくと,このような分類がなぜ,重要なのか

例えば,C(a2)≡{ ga2g-1| g∈G }=A はG の群表[#]を見ながら下の表を作れば明らかです。

g= e a1 a2 a3 a4 b1 b2 b3 b4 hx hy hz
g・a2 a2 b4 b2 b1 b3 hx e hy hz a3 a4 a1
g-1 e b1 b2 b3 b4 a1 a2 a3 a4 hx hy hz
g・a2・g-1 a2 a3 a2 a4 a1 a4 a2 a1 a3 a4 a1 a3

例えば,a1は,

a1=g・a2・g-1 ;  g = b3,a4 または,hy     ← 重複して存在
b3・a2・b3-1 =b3・a2・a3 =hy・a3 =a1
a4・a2・a4-1 =a4・a2・b4 =b3・b4 =a1
hy・a2・hy-1 =hy・a2・hy =a4・hy =a1

となることを確かめることができます。



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